昨年、一昨年と米国APDTのカンファレンスに参加した際、その内容の豊富さ、レベルの高さ、参加者の意識の高さなど、すべての面においてカルチャーショックといっていいような大きな衝撃を受けました。こんな団体が日本にもあれば、日本のドッグトレーニングのレベルも飛躍的に伸びるだろうに・・・と少し切ない気持ちで帰国しました。 同じくAPDTカンファレンスに参加されていた太田理事長も同じ気持ちでいらしたのでしょう。数ヵ月後にはJAPDT設立と、第1回カンファレンス開催のお知らせが届いたのです。講師のリストを見ると、ダンバー博士を始め、学習理論のバイブル”Excel-erated Learning”の著者であるパム・リードさん、米国APDTのカンファレンスではいつも大人気のドナ・デュフォードさんに、ユニークな経歴を持つ動物行動学者ロジャー・アブランテスさんと、私が米国APDTで講義を聞いてファンになった講師ばかりだったので、とても楽しみにしていました。
今回のカンファレンスでは「ショートセッション」というものがありました。日本人講師8名が思い思いのトピックで15分間ずつ話すというもので、私も僭越ながらその一人として「安楽死」についてお話させて頂きましたが、どのお話もそれぞれとても興味深く、もっとたくさん聞きたいと思うものばかりでした。太田理事長が「いずれは全員日本人講師でカンファレンスを・・・」とおっしゃっていましたが、そうなる日は遠くないと感じました。
一口にドッグトレーニングといっても、いろいろなアプローチがあり、トレーナーが活躍する場も様々です。今回のカンファレンスでは、そんな様々な形で犬に関わる皆さんと交流を持てたことが、私にとって一番の収穫でした。例えば、私は安楽死や保護活動のあり方に深い関心を持っていますが、懇親会で、とある動物管理施設で日常的にこの問題と向き合う獣医師さんと知り合いました。また、安楽死についてのお話をさせていただいたことで、同じくショートセッションの講師でいらした『ヘンリー、人を癒す』の著者、山本央子さんに声をかけて頂くという嬉しい出来事もありました。
仕事をしていく上で自分のやり方に疑問や不安を感じた時、それについてとことん意見をぶつけ合える仲間は、経験や知識と同じくらい大きな財産です。米国APDTの創設者であるダンバー博士は、カンファレンスは知識を得るためだけに参加するものではない、そこでいかにネットワーキングするかが大事なのだとよくおっしゃいます。実際、米国APDTのカンファレンスに参加した時は、ベルギーのパピートレーナーやフランスのクリッカートレーナーなど、世界中のトレーナーを紹介してもらい、貴重なお話を聞くことができました。国が違えば犬も、犬に関する常識も、びっくりするほど違います。関心のないものでも「必要ない」と切り捨てず、それらに積極的に触れることで、トレーナーとしての見識が広がり、それを日本でどのように生かせるかを考えるきっかけが生まれると思います。
今回のカンファレンスは第一回ということに加えて地方開催だったせいか、規模もさほど大きくなく、参加者も限られていたような印象を受けました。講義についても、外国人講師の方々が日本のドッグトレーニングのレベルをよくご存知ないという事情も手伝って、ちょっと物足りないと感じられた方が多かったようです。けれども私はこのJAPDTという団体が、APDTが存在する他のどの国においてもそうであるように、必ず日本の家庭犬の地位を引き上げてくれると信じています。
都会を少し離れれば大半の犬はまだ犬小屋につながれ、飼い主もしつけと訓練の区別もつかないのが日本の現状ですが、“家庭犬”というジャンルがものすごいスピードで確立されてゆく様を見るにつけ、この国でも欧米並に犬が社会の一員として迎えられ、認められるようになる日もそう遠くないと感じます。そのためにはまず飼い主さんの意識改革ですが、愛犬家の皆さんはJAPDTカンファレンスに参加することで、トレーナーの皆さんはカンファレンスで学んだことをお客さんや生徒さんに伝えていくことで、それをスムーズに実現できることでしょう。次回のカンファレンスには、もっともっとたくさんの訓練士さんやトレーナーが参加されることを、そして講義のレベルや数も飛躍的に増えることを期待しています。