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JAPDTカンファレンス講師インタビューの第2弾はサラホワイトヘッド先生。ドッグトレーニングとの出会いやご自身の愛犬について、そして、イギリスの犬事情についてのお話は必見です。
(文・取材:西村麻実)
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【N】 ドッグトレーニングの世界に入ったきっかけを教えてください。
【Sarah】 子供の頃からずっと犬が好きだったのだけれど、趣味を仕事に できるなんて思わなかったから、大学では英文を専攻しました。 本なんかを書けるように。それは今になって役に立っているわ (笑)。そのあと大学の生物学科で仕事をすることになって、そ こで行われていた犬と人間の関係や、犬種の特性などに関する 研究を手伝うことになりました。その研究が終わったあと、今 度は、病院やホスピスを犬と訪問するチャリティー団体で、訪 問犬が人間の健康に与える影響の研究をしました。その時幸運 にもジョン・フィッシャー(イギリスのドッグトレーニングの大御所)と出会い、最初は彼 の行動カウンセリングのアシスタントとして、何年も一緒に仕事をしました。
【N】 それはいつ頃ですか?
【Sarah】 85年か86年だったかしら。だから、11年ほど彼と仕事をしたことになるわね。彼は私の インスピレーション。本当にすばらしい人よ。彼から何か新しいことを学ばない日は一日た りともなかった。残念なことに彼は97年に亡くなって、私が彼の行動カウンセリング事業 の跡を継いだけれど、今でも毎日彼のことを想うわ。彼の書いた”Think Dog”という本が、 私の動物行動学への情熱の源。あれがすべての始まりだった。彼の元で勉強できたことは、 私のキャリアにおいて本当に幸せなことだったの。
【N】 プロフィールにあるCOAPE(Centre of Applied Pet Ethology、応用ペット行動学センタ ー。http://www.coape.org/)とはなんですか?
【Sarah】 今は”alpha education”(アルファ・エデュケーション。http://www.thinkdog.org/about.html) という名前に変わっているけれど、動物の行動やトレーニングについて学べる教育機関です。 プロのドッグトレーナーはもちろん、この世界に足を踏み入れたばかりの人からイヌについ てもう少し知識を得たい飼い主さんまで、たくさんの人が学んでいます。クラスは1日で終 わるものから、資格が取得できる1年間のコースまであって、多くの人にとっては、この業 界で生計を立てていくための基礎になっています。
【N】 一般の飼い主向けのトレーニング・サービスも提供しているのですか?
【Sarah】 ええ、アルファの名前で私の教え子たちが19箇所でクラスを開いていて、年間2500頭ほ どの犬が来ます。パピートレーニング、ドッグトレーニング、ファン(遊びの)アジリティ、 トリック、アドベンチャー、それに子ども向けのクラスなど、さまざまなクラスがあって、 私はクラスを教える傍ら、時間ができたら本を書く、という生活(笑)。
【N】 今までに書いた本の名前を教えていただけますか?
【Sarah】 もちろん。いくつか書いているのだけど、つい最近書き終えたのは”city dog”といって、都 会で犬と暮らす人々と、彼らが直面する問題についての本。でも、一番気に入っているの は”Puppy Training for Kids”という本(上の写真)かしら。最新のドッグトレーニングはも ちろん、ボディ・ランゲージや顔の表情の読み方などを子供向けに解説していて、アメリカ でもヨーロッパでも評判がいいわ。
【N】 今飼っているワンちゃんについて聞かせてください。
【Sarah】 ええ。ウィンザーという10歳のゴールデン・レトリーバーがいるわ。
【N】 ウィンザー城のウィンザー?
【Sarah】 そう。威厳に満ちた名前でしょう!(笑)
【N】 講義で使用したDVDに出てきたゴールデン?
【Sarah】 今日の(9月12日『支配性の神話:イヌは狼にあらず!』)は違うわ。あの子たちは昔飼っていた子。ウィンザーはとっても個性的よ。すごく大きいの。ここ(日本)で見るゴールデ ンに比べたら北極クマ級ね!あと、対イヌ攻撃性を持ったイヌとコミュニケーションを取る のがすばらしく上手。
【N】 あと、もう1頭ミックス犬がいるんですよね?
【Sarah】 ええ、コリーとジャック・ラッセル・テリアの(一代)雑種よ。
【N】 え?
【Sarah】 スタンダード・サイズのコリーと、ジャックラッセルのミックス。本当よ!(笑)7ヶ月で バターシー・ドッグズ・ホーム(140年以上の歴史を持つ、イギリス最大級でもっとも有名 な犬猫シェルター。http://www.dogshome.org/)から引き取ったの。ある日、バターシーで 気質テストをしていて、社交的な犬を探していたの。それで私が「あら、この子、よさそう じゃない?」って言ったら、スタッフが彼女をケネルから出してくれて・・・一目ぼれだった わ。性格的に、彼女ほど人間らしい犬を見たことがない。私とそっくりなのよ!それはそれ でちょっと心配だけどね(笑)
【N】 女の子なんですね。お名前は?
【Sarah】 Tao. タオ。
【N】 ジャック・ラッセルとコリー・・・・・。
【Sarah】 両方の血が流れていることが分かるわ。例えば、動かないゴールデンのかかとにかみついて 「集合」させたり(笑)
【N】 今まではずっとゴールデンを?
【Sarah】 小さい頃からゴールデンを飼ってたわ。全部で3頭。
【N】 ゴールデンが一番好き?
【Sarah】 うーん・・・ 今はもう完璧に保護犬にハマってる。ゴールデンは大好きだけれど、ウィンザー が最後になるかも知れないわね。これからは絶対にシェルターから引き取るわ。
【N】 では、タオが初めての保護犬なんですね。
【Sarah】 そう。
【N】 彼女の行動で困ったことはありました?
【Sarah】 引き取って2ヶ月の間にソファをいくつかと、大きな肘かけ椅子をボロボロにしたわよ! (笑)あと、典型的な分離不安で、いつでも私と一緒にいたがった。だけど私はドッグトレ ーナーだから(笑)ボロボロにされたソファの写真を撮って、そのことを記事にしたわ。で もどちらの問題もすぐに治って、それ以来そんないたずらはなし。
【N】 今、いくつですか?
【Sarah】 6歳。
【N】 ゴールデンの方は子犬の頃から?
【Sarah】 ええ、8週齢から。
【N】 それじゃ、そんなに問題行動で苦労はしなかった?
【Sarah】 とんでもない!完璧な犬なんていないわ。ジョン・フィッシャーが言ってた。「どの犬も、 その犬にしか教えられない大切な何かを教えてくれる。そう思わなくなった時が、この仕事 を辞める時だ」って。私もそう思うわ。ウィンザーはすばらしい犬で、特にユーモアのセン スが最高なんだけど、決して簡単な犬ではなかった。でも、それは私にとって良いことだっ たのよ。イギリスでは、かなり頑固、自分のやりたいことをやるという意味だけれど、そう いうゴールデンが多いんですもの。そういえば、一度なんてドナ(Donna Duford、同じく 第2回JAPDTカ ンファレンスで講師を務めた、サンフランシスコ動物保護管理局の行動・ トレーニング課ディレクター)のトーストを食べちゃったのよ!それが彼の自慢みたいね (笑)。けれど、本当に優しい、すばらしい気質の持ち主よ。
【N】 タオは?
【Sarah】 とても賢いわ。そしてすばしっこい。彼女に一つ問題があるとしたら、それは私が彼女につ いてこれないと思ったら、彼女が自分のルールを決めてしまうことね。ウィンザーともタオ とも競技会に出たことがあって、タオとは服従訓練とワーキング・トライアルを両方やった のだけれど、「こんなゆっくりやってられないわ!」と思ったら、私のやり方でいくわよと 言わんばかりに、自分でコースを決めちゃったりするのよ。

【N】 ごめんなさい、ワーキング・トライアルってなんですか?
【Sarah】 専門性の高いドッグ・スポーツで、もともとは、警察犬ハンドラーのための競技よ。
【N】 シュッツフントとは違う?
【Sarah】 上級レベルに進むとシュッツフントという選択肢もあるのだけど、基本的にはトラッキング (臭気追跡)と捜索とアジリティ。でもアジリティも1m80cmの幅跳びや1m80cmの壁超 えなんかがあるのよ。だからスペシャリスト向けね。これにチャレンジする人はジャーマ ン・シェパードやラブラドールを飼っている人が多くて、小さな犬は滅多にいないんだけど、 私もタオもとても楽しんだわ!
【N】 イギリスのイヌについて聞かせてください。3 年ほど前ロンドンに行った時、男の子がロット ワイラーと一緒にかなり混雑したバスに乗って いくのを見ました。乗客の誰も気に止める様子 もなくて・・・これは、イギリスでは普通?
【Sarah】 その犬、きちんとしつけされていた?
【N】 ええ。落ち着いていて、とてもいい子でした。
【Sarah】 そうね。男の子が、親の同伴なしに一人で犬を連れているというのは珍しいけれど、例えば 私が住んでいる町で、人の多い土曜の午前中に街中に出かけたとしたら、たぶん20頭や30 頭は犬を見るわ。もちろんみんなきちんとしつけされていて、リードをつけているけれど。
【N】 公共の交通機関にも?
【Sarah】 もちろん。ただ、ロンドンの地下鉄では犬を抱えていなければいけないから、大きな犬だと エスカレーターを降りる時に大変だけど。でも、それはただ単に、犬の大きさに対しての制 限。一ついえるのは、イギリス人は、犬とどこでも行けるということを市民的自由として誇 りに思っているの。パリのようにレストランにも犬を連れて入れるほどの自由はないけれど、 でも、公園や森の中、野原なんかでノーリードで遊ばせられるのはとても幸せなことよ。それが他にはない、イギリスにおける犬との生活の大きな特徴だと思うわ。ロンドンのハイ ド・パークやリッチモンド・パークのような大きな公園でも犬をノーリードにして楽しめる しね。ただ、そのためには飼い主が犬をきちんとコントロールできなければいけない。とい うことは、トレーニングは必須よ。私の学校で飼い主から一番多くリクエストを受けるのが、 呼び戻し、次にリードを引っ張らずに歩くこと、そして人に飛びつかない、ということなの。 出かける時に犬も一緒に連れていくためにはどれも必要でしょう?
【N】 ということは、咬傷事故などは少ないんですか?
【Sarah】 犬に与えられている自由の度合いを考えると、非常に少ないと言えるんじゃないかしら。他 の国に比べて、社会化をすごく重要視しているから。例えば、私が住んでいる町の公園に対 イヌ攻撃性を持ったイヌを連れていったとしたら、すごく恥ずかしい思いをするわ。たぶん、 その地域に住み続けることにも影響してくると思う。イギリス人は、子犬を買ったら必ずパ ピークラスに行かなければいけない、社会化をしなければいけない、ということを知ってい るの。それが、イヌの行動に責任を持つ、ひときわ優れた社会を作っているのよ。もちろん 例外はあるけれど、全体として我々は、イヌが他のイヌと仲良くできること、人と仲良くで きること、そしてリードを外しても大丈夫なように、日々努力をしているのよ。
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| イギリスのしつけ方教室の風景 |
【N】 講義で、「イギリスはドッグ・セーフティに関して非常に厳しい国だ」とおっしゃっていた のは、そういうことなんですね。
【Sarah】 そう。市民一人ひとりが、自分もそうしなければいけないとプレッシャーを感じるのよ。
【N】 でも、対イヌ攻撃性を持ってシェルターからもらわれるイヌは?そういうイヌを引き取る人 は少ないんですか?
【Sarah】 たくさんいるわ。他の国同様、シェルターは保護犬であふれかえっているから。けれど、引 き取る側も、イヌを引き取ったらトレーニングが必要だという意識を持っている。時間と労 力をかければ、保護犬が、子犬から飼っているイヌと同じか、それ以上に良い「市民」にな れない理由はないわ。
【N】 イギリスにもBSL(Breed Specific Legislation:特定の犬種の飼育を禁止する条例)はあ りますか?
【Sarah】 ええ。U.K.(イギリス、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド連合王国)では、 ピットブル・テリアの飼育が禁止されたので、現在いるピットブルはすべて繁殖制限手術を し、公共の場に連れていく時は必ずリードとマズルをつけなければいけないことになってい るわ。
【N】 それはいつから?
【Sarah】 たしか、1991年。だから理論上はもうピットブル・テリアは存在しないはずなのだけど、 実際はピットブルによく似たイヌをたくさん見ます。スタッフォードシャー・ブルテリアの ミックス、とか言われているわ。そう、アイルランドのダブリンではつい最近、公営の土地 で11犬種の飼育を禁止する条例ができたのよ。ジャーマン・シェパードやロットワイラー、 ドーベルマンなんかも含まれてる。公営の土地で飼育できない、運動させることもできない となったら、それはもう事実上その11犬種を飼うことは不可能ということだから、とても 気がかりよ。これ以上増えないといいのだけど・・・その可能性は否定できない。
【N】 イギリスにも影響があると思いますか?
【Sarah】 U.K.本土にはそんなに影響はないでしょうね。ダブリン市議会が勝手に制定した条例で必 ずしも政府の認可を得たわけではないから、裏口立法と言えなくもない。ただ、最近ロット ワイラーが起こした事件がいくつかあって、そうしたことが起きるたびに「この犬種は飼育 禁止にすべきなんじゃないか」って言い出す人たちがいるのは確かよ。でも全体的に見て (BSLは)効果的ではないし、もっと違う、市民を教育する方法があるはずなのよ。
*このダブリン市のBSLについてもっと詳しく知りたい方は、アイルランドSPCAのこちらの記事に載っています。http://www.ispca.ie/press/dublincitycouncil100707.html
【N】 そうですよね。そう思います。長い時間ありがとうございました。
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