第5回 JAPDTカンファレンス 講演概要

嗅覚を使う訓練が犬にもたらす変化 -災害救助犬を通じてわかったこと-

講師

村瀬英博

日時・会場

9月12日(日) 13:30〜15:20 第2会場

講演概要

犬の嗅覚は、大ざっぱに人間の1000倍から1億倍などとよくいわれますが、要するに、このとてつもない比較の数字が示すことは、犬の嗅覚が私たち人間に比べてどれほどすぐれているかを、私たちが実際に体感することはほとんど無理ということにほかなりません。ですから、嗅覚を使って訓練を進めていく際に、指導手が人間がもっているお粗末な臭いの概念を犬に押し付けてしまったり、臭いの感覚ではとても犬にかなわないので、犬の勝手な行動を受け入れてしまって訓練の方向性を誤ってしまうことが多々あるはずです。でも、精一杯観察力と想像力を働かせて、嗅覚を使った訓練をすることにより、犬にとてつもない変化をもたらすことも可能なのです。私は、災害救助犬の訓練を通してそのことを犬から学んできました。よい服従訓練の基礎が高度な嗅覚作業に先立って不可欠なことは言うまでもありませんが、それはあくまでも基本のステップです。むしろ、日常生活の中で、人とともに暮らす喜びを感じとりながら、人間の社会生活のルールを学んでいくのが自然のことなのではないでしょうか。犬の嗅覚作業を正しく導くことができたとき、犬は知的で従順で質の高い社会性を身につけていきます。嗅覚作業を通して、犬は私たち人間と同等の心の働きをもつようになると思えてなりません。